モンブラン登頂に成功
最高齢記録を大幅に更新
投稿者 松本浩次郎
掲載日 04-10-1

モンブラン(4,807m)はヨーロッパ・アルプスの最高峰。雪を被った優美な姿がフランスのシャモニーから見え、一度はアタックしたいと山好きの征服欲をそそる。

 音楽家兼登山家の 「みなみらんぼうさん」 も還暦記念にとモンブランに挑戦した。ここ数年来、らんぼうさんと海外トレッキングを共にした松本さんも、去年のヒマラヤ・ランタン谷の無名峰(4,500m)で誘われた。それからの半年間は訓練の積み重ねだった。

 8月1日に成田を立った一行17名は、シャモニーのホテルをベースにした。最初の2日間は 「メール・ド・グラス氷河」 で氷河歩行と岩壁昇りの訓練。これでフランス人ガイドとの信頼関係はガッチリ固まった。

 8月4日、女性5名、男性12名、合計17名のメンバーと、ガイド11名の大チームがシャモニーを出発、ロープウエー、登山電車でニー・デーグル(2,387m)へ。そこからハーネス、アイゼンを着け、ヘルメットを被り、ピッケルを握った一行が、ガイドと1対1の2名、1対2の3名チームに分かれ登山を開始、テート・ルース小屋(3,167m)で1泊する。

 翌5日朝、落石の危険のあるクロワール(去年は落石事故で死者、入山禁止)を足早やにトラバース、岩壁を攀じ登ってグーテ小屋へ10時過ぎに到着。先着していたチームがチーフ・ガイドの 「今朝は強風で皆登頂に失敗した。今は曇って天候も安定しているが明日は崩れる。今がチャンスだ。今から登ろう」 で大騒ぎ。冬装備に着替え、軽食と水を背負い準備の出来たチームから出発した。

    氷河の岩壁をハシゴ登攀中の松本
       喜びと感動のモンブラン山頂
左から、ザイルパーティの木内さん、ランボウさん、松本
つかの間の青空にモンブラン山頂で喜ぶランボウ隊
 グーテ小屋(3,782m)から上は一面の雪世界。ザイルで繋がった各チームはボス山稜の雪尾根の急坂で息を切らし、だだっ広いヴァロの避難小屋(4,362m)辺りで、疲れは極限に達した。松本さんも一度は弱音を吐いたが、ザイル仲間の励し、登頂して降りてきた女性仲間の 「頑張って!」 の声に奮い立ち、最後の狭くて急な雪陵を登り切ってモンブラン山頂に立った。先行して松本、木内チームを待ちうけていた 「らんぼうさん」 とガッチリ握手、二人の頬を感激の涙が流れ落ちた。瞬間の青空で記念撮影、すぐ下山。頂頂成功の気の緩みか、痩雪尾根で高山病気味の一人がスリップ、一瞬ヒヤリ。夕暮れの雪斜面を滑り降り、薄暗くなった7時前にグーテ小屋に戻った。

 8月5日一日で、標高差1,640mを登り、1,000m降り、歩行時間は11時間だった。

 翌日シャモニーに戻り、1日休養。8月9日、紫外線・雪焼けでぼろぼろの顔で家に帰ってきた。

 努力を積み重ね、天候のチャンスの一瞬を捉え、励ましあった人間関係が、アタックを成功させた。8月28日、日本経済新聞・夕刊の 「みなみらんぼうのスローライフ」 は 『七十四歳のモンブラン』 で埋まり、モンブラン登頂成功までの交友を感動的に伝えている。
下山開始した我がザイルパーティ
頂上直下の雪面を下る我がザイルパーティ
日本経済新聞 2004年8月28日 夕刊